2022/03/15

机上と地上

先ごろ竣工した建物は自身の思い入れが強いデザイン。
はじめからきれいな建物を作ることが至上命令。

ファサードのエスキースは何枚も描き直し、
ラウンジの詳細は緻密に何度も見直した。
素材、照明計画、家具、オブジェの精査は
それぞれの担当者が何日もかけて。

社外では設計関係者や販売、宣伝関係者が知恵を絞り、
机上で出来ること、すべてを尽くしたプロジェクト。

甲斐あって、関係者の前評判、ウェブの評価はとても良好だった。
実際、販売状況もすこぶる好調で終えた。
それですっかりひと仕事を終えた気がしていた。

先日、現地で竣工した建物を確認する機会をいただいた。
建物はまったくデザイン通りに仕上がっている。
考え抜いた造形が目の前に。
しかし地上で見上げる建築は想像を超え、
迫力に圧倒されて、とてつもない重量が自分にのしかかる。

机上で想像できなかった感覚。
地上ではじめて得る五感。
これが建築デザインの醍醐味だろう。

そして建築を見てはじめて、
建物を練り上げた現場の力にも想いが及ぶ。
地上にはさまざまな力がみなぎる。