2018/12/13
ベトナム、ホーチミン。
想像を上まわる大都市ぶりに多少なり興奮を覚える。
街の中はバイクと人の熱気、そしてモンスーンの湿度で蒸れかえっている。
高温多湿で体温を乱す日本人を横目に、涼しい顔で日中を過ごしているベトナムの人。
おしゃれな若者、コワモテくわえタバコの中年おじさんたち。
スーツとアオザイを着こなしたベトナム航空の職員。
大都市のどこでも見かけるGUCCIやVITONの大型店、
その前の路上で食料を売るおばちゃんたち。
混沌としたOLDとNEWが入り交じり、一つのデザインを描き出しているが、
そのデザインが元気で活気に満ちていることだけははっきりしている。
15年ほど昔、上海は同じように元気なデザインで活気づいていた。
でも今の上海はすでに洗練されていて、成長期の驚きは薄れているかもしれない。
ボクが社会に出てデザインを始めたころ、
80年代の日本列島は元気にあふれ、
デザインの行く手を阻むものは何もなかった。
成長期の試行錯誤に寛容だった時代。
その成長期、日本が目指した先は欧米、中国が目指した先は日本。
結果としてよく似た価値観の街が生まれた。
旧ベトナム大統領官邸はベトナム人建築家、ゴー・ヴィエト・トゥの手によるもの。
広大な庭から吹き抜ける爽やかな風を捉える開放ハイサッシ。
執務室から臨むプルメリアは大統領の目と薫りを愉しませた。
この見ごたえのあるミッドセンチュリーデザインは
ベトナムの気候と四季を知り尽くすベトナム人だけができうるデザイン。
そう、ベトナムデザインは、先進国のカルチャーに侵されることなく、
元気と熱気、そして湿気をも含んだ独自の個性を伸ばしてほしいと願う。